海外商標でよくある失敗とは?先取り・越境EC・代理店トラブルを解説

海外で商品やサービスを展開する際、注意したいのが商標をめぐるトラブルです。

「日本ですでに使っているブランドだから大丈夫だろう」「海外で売れ始めてから商標を取ればいい」と考えているうちに、第三者に先に商標を取得されてしまうケースもあります。

さらに、海外では現地の販売代理店やパートナーとの商標トラブル、越境ECをきっかけとしたブランドの模倣など、国内だけで事業を行っていると想定しにくい問題が起こることもあります。

一度トラブルになると、商標権を取り戻すための交渉や審判、訴訟が必要となり、解決までに長い時間と大きな費用がかかる可能性もあります。

そこで今回は、海外商標で起こりやすい失敗や実際のトラブル事例、その予防策について、YKIの海外案件担当者に聞きました。

【関連記事:海外商標とは?出願のタイミング・費用・期間を海外案件担当者が解説】

この記事でわかること

海外商標で起こりやすい失敗・トラブル

海外代理店・現地パートナーとのトラブル

越境ECでの商標トラブル

トラブルを防ぐために

海外商標で起こりやすい失敗・トラブル

Q1.海外商標で一番多い失敗は何ですか?

代表的なのは、自社が出願する前に、第三者に商標を先に取得されてしまうことです。

多くの国では、原則として先に出願した人が優先される「先願主義」が採用されています。

そのため、日本で以前から使用しているブランドであっても、海外で自社が商標を取得していなければ、第三者による出願・登録が問題になることがあります。

事前に商標調査を行うことで、先行商標の存在を把握できます。一方、調査をせずに出願した場合は、出願後の審査などで初めて先行商標の存在を知るケースもあります。

重要なのは、海外展開を検討し始めたら、早めに調査・出願について考えることです。

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Q2.「もっと早く相談すればよかった」となるのは、どのようなケースですか?

多いのは、相談を受けた時点ですでに第三者に商標を取得されているケースです。

先に権利を取得されてしまうと、その後はその第三者が取得した商標権に対して、どのような措置を取るのかという問題から考えなければなりません。

特に商品やブランドの人気が高まり、海外でも広く知られるようになると、国を問わず第三者に先に出願されるリスクが生じます。

中には、「日本で人気のブランドだけれど、この国ではまだ商標登録されていない」と気づき、先に出願する人もいます。悪意を持って、人気のブランドや今後広まりそうなブランドの商標を取得しようとするケースもあります。

ブランドが広まってからではなく、海外展開を検討している段階から商標について確認しておくことが、こうしたリスクを減らすことにつながります。

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Q3.第三者に商標を先に取得された場合、取り戻すことはできますか?

第三者が取得した商標について、取消しなどの手続きを検討できる場合はあります。ただし、必ず取り戻せるわけではありません。比較的スムーズに解決するケースもあれば、相手が権利を主張し続けることで、審判や訴訟などの手続きへ進むケースもあります。後者の場合、解決までに長い期間がかかる可能性があります。

「先に取られても、後から取り戻せばいい」と考えるのではなく、そもそも第三者に先に取得されないよう、早めに対応することが重要です。

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Q4.商標トラブルが訴訟になることもありますか?

あります。

第三者に取得された商標を取り消すための手続きなどで双方の主張が対立すると、審判や訴訟へ進む場合があります。実際に、解決まで何年もかかったケースもあります。訴訟になれば、時間を要するだけでなく、費用負担も大きくなります。

日本側の専門家への費用に加え、現地代理人への費用や、国・手続きによっては訴訟を担当する現地の専門家への費用などが必要になる場合もあります。海外商標は、問題が起きてから対応するよりも、事前に権利を確保しておく方が時間・コストの両面で負担を抑えられる可能性があります。

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Q5.出願が遅れたため、商標権を買い取るケースもありますか?

あります。

第三者がすでに商標権を持っているものの、そのブランド名をどうしても使用したい場合、相手方と交渉して商標権を譲り受ける方法を検討することがあります。ただし、相手が譲渡に応じてくれるとは限りません。

また、相手から高額な譲渡金額を提示される可能性もあります。ブランド名の変更が難しくなってから交渉することになれば、企業側の選択肢も限られます。

出願時に必要となる費用だけを見るのではなく、出願しなかった場合に将来発生する可能性のあるコストまで考えることが重要です。

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海外代理店・現地パートナーとの商標トラブル

Q6.海外代理店や現地パートナーに商標を先に取得されることはありますか?

あり得ます。

海外で販売を始める際、現地の代理店やパートナーに販売を任せる企業も多いと思います。その際、自社が現地で商標を取得していないと、現地パートナー側が商標を取得してしまい、後から権利関係が問題になる可能性があります。特に代理店との契約を終了した後もその国で事業を続けたい場合、商標を代理店側が保有していると、ブランドを継続して使用するうえで大きな問題になりかねません。

そのため、海外の販売代理店などと契約する際には、商標を含む知的財産権を誰が取得・保有するのかについて、契約上明確にしておくことが重要です。

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Q7.海外代理店と契約する際、商標について注意すべきことはありますか?

まずは、商標を含む知的財産権について、誰が取得し、誰が保有するのかを明確にしておくことが重要です。

海外の販売代理店などは、ブランドの商品を継続的に販売するために、商標権の有無を取引開始前から確認することもあります。場合によっては、商標を取得していないことが取引やライセンス契約の判断に影響することもあります。

日本企業では、長年の関係性などから契約内容を細かく決めずに取引を進めるケースもありますが、海外展開では「相手との関係が良いから大丈夫」と考えるだけではリスクがあります。代理店契約などを締結する段階から、商標を含む知的財産権の扱いについて確認しておくことが重要です。

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越境ECでも起こる海外商標トラブル

Q8.越境ECだけでも海外商標を取得した方がよいですか?

海外から商品を購入できる状態にするのであれば、商標についても早めに検討することをおすすめします。「現地に店舗や法人をつくっていないから、まだ海外商標は必要ない」と考える方もいるかもしれません。しかし、越境ECでは、サイトを公開すると、海外の消費者にも商品やブランドを知ってもらう機会が生まれます。

ブランドが広く知られるきっかけになる一方、第三者にもブランドの存在を知られるため、先に商標を出願されるリスクも生じます。

オンラインだから商標リスクが小さいのではなく、オンラインだからこそブランドが瞬時に国境を越えて知られるという点に注意が必要です。

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Q9.越境ECでは、実際にどのようなトラブルがありますか?

ブランド名だけでなく、Webサイトや商品ページなどが似た形で模倣されるケースがあります。さらに、国やプラットフォームによっては、第三者が「自分が正当な権利者である」と主張して申請するようなケースもあります。

第三者が正規の販売者や権利者であるかのような状態になってしまうと、本来のブランド側がプラットフォーム運営者に事情を説明し、相手方の申請を取り下げてもらうための対応が必要になることもあります。こうしたトラブルは、解決のための対応そのものにも大きな労力がかかります。

越境ECを始める場合には、サイトを公開して商品を販売し始めてからではなく、その前段階から商標について確認しておくことが重要です。

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海外商標のトラブルを防ぐためにできること

Q10.海外商標のトラブルを防ぐため、最初に何をすればよいですか?

まずは、海外展開を検討している国で、自社が使用したい商標について確認することです。

特に、

・会社名やハウスマーク*
・主力ブランド名
・商品・サービス名
・継続して使用するロゴ

など、後から変更することが難しいものは優先的に検討した方がよいでしょう。

また、出願前に先行商標を調査することで、第三者がすでに同一・類似する商標を登録していないか確認することもできます。海外代理店を利用するのであれば、商標などの知的財産権の帰属について契約内容を確認することも必要です。

「出願する」だけではなく、調査・契約・出願・その後の管理まで含めて考えることが、海外でブランドを守ることにつながります。

*ハウスマーク(コーポレートマーク)とは、企業名や社章、会社のロゴなど、会社全体や組織の出所(提供元)を示すシンボルマークのことです。商品のパッケージや会社の看板、ホームページなどに使われ、企業の信頼や責任の所在を表します。

海外商標をいつ検討し始めればよいのか、出願までの基本的な流れについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

【関連記事:海外商標はいつ相談すべき?】

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海外商標のトラブルで特に注意したいのが、第三者による商標の先取りです。すでに第三者に商標を取得されてしまうと、取消しなどの手続きを検討する、商標権を譲り受ける、ブランド名を変更するなど、本来であれば必要のなかった対応が発生する可能性があります。

相手方と争うことになれば、解決までに長い時間と費用が必要になるケースもあります。また、海外商標の問題は、現地法人を設立して本格進出する企業だけのものではありません。現地代理店を通じて販売する場合や、越境ECで海外から購入できるようにする場合にも、商標をめぐるリスクはあります。

海外展開を考え始めたら、「どこで販売するのか」「どのブランドを使うのか」と同時に、「その国で商標をどのように守るのか」についても検討しておくことが重要です。

YKIでは、各国の現地代理人とのネットワークを通じて、さまざまな国・地域の海外商標についてご相談いただけます。進出国が完全に決まっていない段階でも、今後の事業計画を踏まえながら、調査・出願の優先順位などを検討することができます。

※商標制度や必要な手続き、第三者の商標に対して取り得る対応は国・地域や個別の案件によって異なります。具体的な対応については、個別にご相談ください。

◾️海外商標の出願タイミングなどについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。

【関連記事:海外商標とは?出願のタイミング・費用・期間を海外案件担当者が解説】

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取材・構成:西田 ひとみ