【商標】商品・役務の類否 

商標の権利化の場面において、先行商標との指定商品・役務の類否は、どのように判断されるのでしょうか。 

日本特許庁は、審査において「類似商品・役務審査基準」に基づいて商品・役務の類否を判断しています。この基準では、商品・役務を一定のグループに分類し、それぞれに数字とアルファベットからなる5桁の「類似群コード」が付されています。 審査実務上、同一の類似群コードが付された商品・役務は原則として類似すると推定され、異なる類似群コードが付された商品・役務は非類似と推定されます。審査段階でこの推定を覆すことは容易ではありません。 

しかし、審判段階や訴訟段階ではどうでしょうか。 

以下にご紹介する無効審判(無効2023-890053)では、同一の商標について指定された、「医療用機械器具(『歩行補助器・松葉づえ』を除く。)」〔類似群コード10D01〕と、「医療用機械器具の貸与」〔類似群コード42X09〕との類否が争点となりました。 

当初、審決は、一般的、恒常的な取引の実情を勘案して総合的に考慮するとこれらの指定商品・役務は非類似であるとの判断を行いました。 

しかし、この審決を不服とした審決取消訴訟で、知財高裁は以下のような理由で、両者を類似すると判断し、その差戻審決で、本件商標登録は「医療用機械器具の貸与」について無効となりました。 

本件指定役務・医療用機械器具の貸与と、本件指定商品・医療用機械器具の製造・販売は、同一事業者によって行われている例が多数みられ、これらの用途は共通し、販売場所と提供場所は同一である場合が多く、需要者の範囲は実質的に重なっている。このような取引の実情を踏まえると、本件指定役務・医療用機械器具の貸与と本件指定商品・医療用機械器具に同一の構成の商標を使用する場合には、同一の営業主体の製造・販売又は提供する商品・役務と取引者・需要者に誤認されるおそれがあるというべきである。 
(令和6(行ケ)10028 知財高裁裁判例 要旨より)

この件は、指定商品・役務が医療関係であったことや、知財高裁まで争ったという点で特殊なケースですが、異なる類似群コードが付されていても、具体的な取引の実情によっては商品・役務の類似性が認められることもあることを示しています。

類似群コードは重要な判断指標ですが、絶対的なものではありません。特に審判や訴訟の場面では、実際の市場における取引実態を示す証拠が結論を左右することがあります。類似群コードが異なることのみを理由に諦めるのではなく、取引の実情を裏付ける証拠を収集し、積極的に主張・立証することが重要です。 

商標グループジェネラルマネージャー  弁理士 葦原 エミ