【模倣品対策】税関統計が示す模倣品対策の現在地
財務省が、2025年上半期における税関での知的財産侵害物品の差止状況を公表しました。(https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/cy2025_1/ka20250905.pdf)
この統計は、模倣品・海賊版の流通実態を把握するうえで重要な指標です。
[高水準が続く差止件数]
2025年上半期の輸入差止件数は 17,249件(前年同期比▲5.6%)。
減少傾向ではあるものの、3年連続で1万5千件を超える高水準が続いています。
点数ベースでも 416,531点 と、5年連続で40万点超の規模が確認されています。
[商標権侵害が件数の約94%]
件数ベースで 16,339件(93.7%) が商標権侵害によるもの。
点数ベースでも 193,229点(46.4%) と商標を巡る模倣品の問題の大きさがうかがえます。
特にアパレル、雑貨、日用品など、ブランド名で選ばれる傾向の強い分野で影響が大きいことが見て取れます。
この統計情報からは、企業にとってブランド価値を守るためには、商標を軸とした模倣品対策が不可欠であることがわかります。
[模倣品流通によるダメージ]
模倣品流通による影響は、単に売上が奪われて金銭的な損失が生じるだけにとどまりません。
低品質の偽物を入手した消費者はブランドに対する信頼を損ないます。昨今では消費者自身がそれをSNS等を通じて広く発信できるため、社会全体に影響が広がる可能性もあります。また、安価な模倣品が広く出回ることでブランド品の希少性が損なわれ、消費者が正規品を求める動機が低下します。これは、企業が長年かけて育てたブランド価値そのものが失われるということです。
[有効な対策]
模倣品を実質的に食い止めるための有効な手段が、税関による「輸入差止め」です。
輸入差止め制度を活用するためには、まず商標権等の権利を取得し、それに基づく輸入差止めを税関に申し立てる必要があります。
ブランド企業にとって、商標は「登録して終わり」ではなく、模倣品に対する監視、事前の流通遮断まで含めてブランド戦略と位置付けることが重要です。
[まとめ]
●2025年上半期も税関による知的財産侵害物品の差止件数は高水準。
●差止件数の約94%は商標権侵害が占め、ブランド模倣品が中心。
●模倣品流通は売上被害だけでなく、消費者信頼やブランド価値にも影響。
●税関による輸入差止めは有効な対策。まずは権利取得、税関への事前届出と監視が重要。
商標グループ 弁理士 浅見 祥子
