【商標ニュース】「le sapin」と「サパン/SAPIN」は類似する?

― フランス語商標の事例 ―
(不服2024-2553)

◆ 概要

「le sapin」の出願に対して、「サパン/SAPIN」の二段併記商標が引用され、両者は類似であるとして拒絶査定となりましたが、不服審判で非類似と判断されました。「sapin」は「モミの木」を意味するフランス語の一般名称で、「le」は定冠詞です。

◆ 審決のポイント

審決では両商標を以下のように分析し、非類似と判断しています。

本願商標「le sapin」は、全体が同書・同大で統一感があり、一体的に認識される。発音についても、ローマ字読みで「レサピン」、フランス語読みで「ルサパン」と、自然に一続きで呼ばれる。「le」はフランス語の定冠詞、「sapin」は「モミの木」を意味するが、日本では一般に馴染みがなく、取引者や消費者が直ちにその意味を理解するとは言い難い。そのため、商標全体からは特定の意味(観念)は生じない。「sapin」のみが取引上使われるとは認められず、全体で一体的に理解される。

引用商標は、欧文字「Sapin」とその上に配置された片仮名「サパン」から成る。片仮名は欧文字の読み方を明示しており、商標全体として「サパン」と呼称されると理解され、特定の観念は生じない。

両者を比較すると、外観では、文字の構成や配置に違いがあり、明確に区別できる。

称呼では、「ルサパン」と「サパン」や、「レサピン」と「サパン」といった呼び方の違いがあり、特に語頭や語中の音の違いが全体に与える影響は小さくなく、聞き間違えることはない。
観念については、どちらも特定の意味を生じないため比較できない。

よって、本願商標と引用商標は、外観・称呼において明確な違いがあり、消費者に混同を生じさせるおそれはないと判断される。

コメント

外国語の普通名称でも、日本で一般に知られていなければ、造語として判断されてしまいます。フランス語は日本では一般には理解されないため、「le」がフランス語の定冠詞であっても、商標全体として一体的に判断され、称呼が生じると判断された一例と言えるでしょう。

英語の定冠詞「the」の有無での類否判断はどうでしょうか?

この場合も、「the」の後に日本で一般に意味が理解できる語が続くかどうかで判断が別れるようです。

商標グループジェネラルマネージャー  弁理士 葦原 エミ