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EPC規則改正:優先権主張の基礎出願のサーチ結果の提出が要求されるようになります

欧州特許庁(EPO)は、優先権主張を伴うEPC出願の出願人に、優先権主張の基礎出願のサーチ結果をEPOに提出することを要求する規則(改正EPC規則141,新EPC規則70b)を導入します。改正後の規則は、2011年1月1日に施行されます。


1.サーチ結果の提出の要求(EPC規則141(1),70b)

優先権主張を伴うEPC出願の出願人は、優先権主張の基礎出願が出願された国(地域)の特許庁によって行われた、すべての先行技術調査の結果(サーチ結果)を提出することが求められます(EPC規則141(1))。

EPOは、EPC出願の出願時、あるいは「出願人がサーチ結果を入手した後、遅滞なく」、サーチ結果を提出することを要求しています。EP域内に移行されるPCT出願の場合、EP域内への移行時にサーチ結果を提出することが要求されます。

EPOの審査部が審査を開始するまでにサーチ結果が提出されなかった場合、2ヶ月の期間が設定され、サーチ結果またはサーチ結果を入手できない旨を記載した書面を当該期間内に提出するよう、出願人に通知がなされます(EPC規則70(b))。2ヶ月の期間内に応答しない場合、出願取り下げとみなされます。

EPC規則141(1)で要求されるサーチ結果は、該当国(地域)の特許庁が発行した公式書面のコピー(現地特許弁護士によると、サーチ結果の通知書類におけるEPC出願の対応出願の番号を含む部分のコピーで足りる)でなければならず、出願人が作成した先行技術文献のリストでは足りません。

なお、サーチ結果がEPOの公式言語の他の言語で作成されている場合であっても、サーチ結果の翻訳を提出する必要はありません。

また、サーチ結果において挙げられている引用文献のコピーを提出する必要はありません


2.サーチ結果の提出の免除(EPC規則141(2))

EPOの長官が決定した条件により、サーチ結果が「EPOにより入手可能である」と言える場合、出願人による提出がなくても、正当にサーチ結果が提出されたものとみなされます(EPC規則141(2))。例えば、EPC出願を基礎として優先権を主張するEPC出願の場合、先のEPC出願のサーチ結果はEPOにより入手可能であると言えます。

EPOは、将来的に、基礎出願の先行技術調査を行った国の特許庁から自動的にサーチ結果の提供を受けられる体制を整備するよう、各国の特許庁との連携を進めているようです。


3.その他の先行技術の提出の要求(EPC規則141(3))

EPOは、EPC出願の出願人に対し、2ヶ月の期間内に、当該EPC出願に関係する発明について各国(地域)の審査手続において考慮された先行技術に関する情報の提供を求めることがあります(EPC規則141(3))。

4.適用時期

改正後の規則は、2011年1月1日以降の優先権主張を伴うEPC出願および2011年1月1日以降に行われるEPCの分割出願に適用されます。また、EP域内に移行されるPCT出願の場合、国際出願日が2011年1月1日以降である出願に適用されます。


5.実務上の留意点

EPC規則141(1)では、EPC出願時またはEP域内段階への移行時に基礎出願のサーチ結果を提出するよう規定されていますが、実務上は、EPOの審査部が審査を開始するまでに提出すれば足りると思われます。したがって、EPC出願の審査請求時または審査請求の確認時に提出するか、あるいは、新EPC規則70bに従いEPOからサーチ結果の提出を明示的に要求されるのを待って提出しても良いと考えられます。


ご不明な点があれば、弊所まで御連絡下さい。

(関連情報)
http://www.epo.org/patents/law/legal-texts/journal/informationEPO/archive/20100803.html

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